広域処理について

試験焼却の結果をもとに私は科学的に広域処理が前橋における環境負荷を増すことはないと判断しました。その結果を受けて3回の説明を行いました。しかし賛成の市民がおられる一方、不安を持つ市民の納得を得ることはできませんでした。バクフィルターの除去能力への不安は「冷却し除去できる。」などの説明によって納得を得られました。しかし「科学的に安全だから皆、賛成してくれるだろう。」とは私たちの奢った思い違いだったと痛烈に感じるのです。
したがって最終的な受け入れ判断の前提として、3回の説明会にて、市民から伝えられた不安を和らげる取り組みを私たちができるか?それを示して議会説明し賛同を得られるか?が最後の前提になったと私は考えております。それにしてもなぜ市民の不安は消えないのか?その理由こそ、私たちが行う対応の前提にあるものであろう。そう思うのです。
「3.11」で問われたことは、科学的根拠を都合よく解釈して利用したり、あるいは情報を秘匿して真実を明らかにされなかったりという政治的な操作が露見して、結果的には揺らいでしまった「科学」そのものへの信頼だろうと思います。

政府が発した「ただちに健康に影響はない」という評価が実際には表層を捉えたものであり、その裏側には悲惨な故郷から移住を迫られるという状況が現実として起こっています。政治や行政が国民から多くの信頼を失った世界(時代)に私たちは置かれている・・ということをまずは座標の原点において、私たちは前橋における不安を払拭するべきと肝に据えざるを得ません。

これからの政策実行に求められているのは、次の「3つの、-dence」であるという概念を推奨したいと思います。
① evidence(エビデンス)
誰もが信用する、最も確率的な情報としての実証的根拠
② prudence(プルーデンス)
慎重さ、思慮深さ
③ confidence(コンフィデンス)
確信的な信用

この3つは並立的なものではなく、①と②があるという前提で③が生まれると解釈します。今回の瓦礫に関するプロセスとしては、①は関係職員の努力によって得られたと評価します。それでも市民理解が得られないのは何故なのか?それは②が不足しているが故に③に到達しなかったのではないか?と感じています。

以上を前置きとして市役所職員にお願いしていくつもりです。
市役所全体として私たち市役所全体が対応すべき課題を申し上げます。

【現状】
先日の妊婦さんやそのグループの傾向からわかり、また広域処理全般と宮古地区の現物の状況が混同され、放射性物質を原因とする健康被害への不安というその一点に集約されてしまったことが不幸であると思います。

【要因】
何故、試験焼却の計測結果をもって安全性(少なくても危険ではないということ)が理解されないのか?ひとつには数値的な証明は広く一般市民(特に女性や高齢者)の心情を必ずしも動かさない・・という側面があります。
特に数値を羅列した表の提示は行政レベルでは合理的ですが、市民の感覚としては逆に(算数が苦手な子供がいるように)拒否反応を示すケースもあるということを認識します。
[a+b<c]なので問題ない・・と説明されても得心に至らない市民がいる…ということを前提に、より判りやすい説明の工夫が行政には必要です。子どもが納得するようなプレゼンテーションの方法を研究するべきダッと反省します。
安全と私たちの確信を上から押しつけるのではなく、おもてなしの心での行政のサービスを構築すること・・これは前橋市政における結う優先する心構えだったはずです。
テーマとしては「子供でもわかる処理のしくみ」です。

【選択】
先の署名授受等によって、真摯に子供への不安を感じたお母さんからの署名をお預かりいたした際に「この不安へ寄り添えない場合によっては処分受け入れ辞退」という選択肢の必要性も感じました。
どんなに説明しても、払拭できない不安の中での出産、育児はどんなにお母さんたちの心を苦しめるのか。私たちが一人たりとも切り捨てないという意思をしめす方法を探る努力を私は続けようと考えます。

ただし、“受け入れ辞退という結論によって署名者等の健康不安が払拭されるものではない”ということをよく考えていただきたい。
現実として、荻窪に混合処分しようが、あるいは今までの市民から出された一般ゴミのみを埋設しようが、実情は変わらないのですから。
本当に前橋市の若い人や(これから生まれる出生児を含む)子供達の為に、何が足りなかったのか、何が出来るのか・・「市民に寄り添う」
とすれば、より一層の検証と対策が求められているのではないでしょうか?

以下は、震災瓦礫を受け入れる/受け入れないに関係なく検討するべきテーマとして担当課に指示をいたしました。

【対策1:広報の見直し】
前橋市のゴミ焼却場の近隣住民への情報提供は親切だったか?排煙の測定掲示板の数字の意味を知らない住民もいました。下水処理施設の新設ラインを高濃度放射能の保管倉庫と勘違いし不安を訴えた市民もおられました。これらは最終処分場においても同様です。
モニタリングの測定の周知なども拡充する必要があります。また自治会やウェブなどの広報も同様です。これからでもいいから一層の広報に着手することを実行すれば、不安を抱いている市民感情に対応できるのではないでしょうか?

【対策2:放射能汚染相談体制の検討】
市民の中で、特に強い健康不安と懸念を抱いているのは子供を持つ母親だったりその予備軍だったりします。実際問題、科学的根拠に欠けている部分も感じないわけではありませんが、不安な心情を親身に聞いてくれるカウンセリングがあって、その声から得られる問題提起に対し各課横断的に対処させるように指示があれば不安が解消されるのではないでしょうか?単に説得するのではなくて、極力気持ちに寄り添うように充分話を聞くこと。できれば女性職員から任用することも一考です。

【対策3;希望者には測定器の貸与を】
特に妊娠中の女性や子育て中のお母さんも地域からの情報が届かない場合があります。それが故に不足に駆られることもあるでしょう。自宅におられても放射線量が把握できるように取り組むべきです

【対策4:最終処分場の対策】
ゼオライトの応用など除染技術は研究機関等でも実用化に向けて積極的に取り組まれているようで、調査させる価値は充分にあります
職員が現状に満足することなく研究心を持って新たな手法を模索すれば、きっと環境対策は向上すると思います。

以上、三回の説明から私が感じた不安を減じる手法を述べました。

行政を預かる者の責務として何が出来るか、何をせねばならないか、この瓦礫処理の問題はある意味で事故後に市長に就任した私に新たな課題を提示した契機になったのではないでしょうか。そして「徹底的に市民に寄り添う。」「問答無用の市民切り捨ては行わない。」という心情と政治理念をあらゆる行政課題を通じて貫いていこうと考えます。