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モンゴル

1000年の時間が混在する大地

視察と言えば我々の先を行く先進地を見ると思っていた。
つまり我々の未来を見ることだけが視察に意味だと。
そして良き未来なら、そうなるように学び
悪しき未来なら、そうにならないように学ぶ。

モンゴルには、我々の未来はなかった。あったのは我々が失った過去だった。
私は一枚の絵を土産に持ち帰った。そこには
馬に乗った遊牧民の親子が、我が家のゲルに帰った姿を描かれていた。
牛や羊やヤギの群れを草地から我が家に連れ帰った瞬間なのだと思った。
私たちは、この家族の連帯とゆっくりとした時間の流れを失ったのだと感じた。

そして、ウランバートルの町には富を追う、ちょっと前の日本の姿があった。
1000年も昔の日本と、ちょっと前に日本。
この時代が同時に混在するモンゴルに私はたくさんのことを学んだ。

多くの企業や農家、遊牧民、道や市場でたくさんの人に出会った。農業や工業、建設、精肉、流通の仕事を垣間見た。モンゴルの暮らしのすべてに非効率と低生産性を感じる。
日本人なら、自分自身の職業を持つ日本人は、同じ分野の職業を見れば誰も「日本の仕組みや機械を使えばもっと良い製品をつくる、もっとコストを減らせる経営ができる。何でこれを使わないのだろう。」と思うことだろう。

モンゴルには、私たちは使い方を知っている。しかしモンゴル人の使わない資源が沢山ある。
特に乳資源は活用されないまま眠っている。
搾乳機・フリ-ストール方式・子牛に脱脂粉乳を与えること・牛の耳標による出産管理も行われていなかった。
遊牧民と同様に自然の中で、1000年前と同じように家畜たちも生きている。
転々と移動しながら、草原の自生した草だけを食べて、逞しい家畜たち
(これだけ家畜がいるのに1リットル200円の牛乳パック。しかも多くがロシアからの輸入。資源の活用がないからだろう。
一方1リットルの乳価が70円の酪農家見学した。カナダ産ジャージー種の人工授精牛やアメリカ製コンバイン、日本の酪農家の乳価と遜色ない値段だ。餌はすべて自前の草と自前の小麦。これで70円/リットルはすごい高付加価値商売もある。輸入のえさ代に苦しむ群馬の酪農家が聞けば羨むことだろう。)


ウランバートルでは、収集できないまま、風に乗って舞う飛ぶビニール袋。このゴミを政府は埋め立て処分するらしい。リサイクルをする気配はない。これも使われない資源。
石炭火力発電の煙突から、黒い黒煙が空を横切っている。風下に入るとはっきりと炭焼き小屋のような匂いがする。
煤煙除去を知っていてもしない。

何か、もったいないことばかりだ。
でも一つだけ機能していることにであった。政府の貧困対策だ。
NHKの報道で見た「零下30度の中、マンホールに暮らす少年たち」に今回は出会うことはなかった。
政府の力がついてきたのだろう。ほっとする。最低の貧困は減少してきたのだろう。

しかし4輪駆動のベンツがこの国の貧困を際立たせることも事実だ。
豊かな者の子供たちは、高度な教育を独占して、もっと豊かになっていく。
豊かな者と貧しい者が離れていく事が明確に感じる。
貧しくても努力は報われるチャンスが日本には在る。
富める者と貧しき者の差を近付ける社会システムだ。

ここまで書いてきたこと全く反対にことを感じる。
私は、ゲルに暮らす遊牧民が貧しく、ベンツに乗る人が豊かだと書いてきた。
ウランバートルでであった小麦の大農場主やクズ鉄から粗悪な鋼材を作る業者、鉱山の開発業者
が豊かで、ゲルの脇で羊の肉を煮込みながら家族と過ごす遊牧民が貧しいという考えは間違いではないか。現代の日本人の勝手な思い込みかも知れない。

冒頭、書いたように、我々の失った、時間と連帯を持っている遊牧の民は貧しさに泣いているのか。
モンゴル滞在中、たくさんの視察先に立ち寄った。忙しい旅程でも不思議に私はリラックスしていた。
そこにある時間の流れが私の脳に「休め!」の信号を送ってくれた。

真っ暗な草地に寝転んで、見上げる天の河と星たち。
川辺で石を拾い、その形から動物を連想する。
車を降りて、仲間とはるかに見える小麦畑を目指して歩く。
朝、ジョギングすると牧羊犬が一緒に走ってくれる。
小さな花たちで埋め尽くされた丘の上で馬乳酒のお替り。
夕食の仲間との語らい。

あー。この地でこの人たちの暮らしをもっと感じていたいと思った。

たとえば一本ののこぎりを与えることで、彼らの暮らしを少しだけ楽にする。そんな手伝いをできることを夢見る。
チェーンソーではだめだ。生産性の急激な上昇が彼らの社会システムを壊してしなうような気がする。
モンゴルにあるのは、我々の失った時間の流れを超越した精神性なのだ。
これを破壊すれば、二度と手に入れることはできない。
現代人の思い込みを捨てて、この社会を尊敬しながら、少しだけ役に立つ。そんなことが私にできれば幸いだ。

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2008年08月20日 23:01に投稿されたエントリーのページです。

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